おそらくすべて、ただひとえに、一人に宛てた手紙

献呈

 
ずっと探していたことは
誰かに話す様なことではないから
きっともう
誰に、気づかれることもなく
共に逝くでしょう
 
きみを抱きしめるうではあるのに
距離が遠すぎて届かないよ
今目の前に居てくれたとしても
君は拒み嫌がるかもね
閉じた瞳、映す姿は
 
ずっと気づいていたことも
それこそ、誰かに話すことではないから
きっと、もう、本当に
 
罪悪感なんて捨てちまえよ
信じることと期待は違うよ
厳しくするのはやめろよ
 
私を確かめる様に
頬を触った指先
はじめて私の内に飛び込んできた声
それは私がはじめて自分から気づき
この手が取った最初の歌だったけれど、
これもすべては遠い昔に仕込まれ、
そして気付かぬうちに起きていたこと
 
いつか魔法は解けてしまうかもしれない
それでもいい
あなたは忘れないと言ったから
忘れないだろう
私は憶えていた
それで充分だ
 
きみを探す瞳はあるのに
距離は遠ざかり、朧になる
もしそこに居て、微笑み交わしても
きみはきっと気付かぬでしょう
 
ここに永遠はない
ただし有限の世界で意味するところ、
あるいは二元論者の語るところではという話
あなたも私も知っている
はじまりと終わりがひとつの世界、
無限を意味するそこでなら、いつでも逢える
ただ、ここに
絶えず変化し続ける生命
つまり、私たちがせつなを繋ぎ現る、
今を生きる世界に
永遠はない
今、その瞬間にだけ、それがある
 
あなたもわたしも知っていること
そして、一度忘れて、再び思い出したこと、
その記憶のかけらよ
 
まるであなたの好きな光に似てる
まだきっと、その瞼に遺っている彗星、
今日も変わらぬ星
 
あなたも端から望まないでしょう
見えないものが見えて、
それを追いかけられるあなたなら
気づいて、抱き、信じられたあなたなら
きっと、最後まで、
自分を愛することができる
あなたなら
 
恐怖からではなく、
愛から生きて
 
自然なはずの触れ合いも
難しい私だから
このくらいの距離で丁度良いんだろう
遠い昔に仕込まれてあって
気付かぬうちに起きていたこと
いつかこの熱すらさめてしまうかもしれない
それでもいい
 
あなたの首を抱いた
その時に感じた体温
それもまた幻であろうがなかろうが
どうでもいい
 
あなたは忘れないと言ったから
忘れないでしょう
私も憶えていた
 
きみを映す想いがあるのに
距離が遠すぎる 届かないよ
それでも前へ進んでいくほど
私の内側思い出すものがある
そして今尚あなたの声がする
私もまた聞いて欲しい歌が
 
閉じた瞳浮かぶ姿
たとえそこに私は映らずとも
愛を私に、ありがとう
 
あなたも誰かを通し
気づいている、そうでしょう