おそらくすべて、ただひとえに、一人に宛てた手紙

2023-11-01から1ヶ月間の記事一覧

晩夏 

苦虫を噛み潰したかの様な顔をした あなたが可笑しくて 手を叩いて笑っていたのは去年の夏 スイカがとても好きだから あなたはよく買ってきてくれた 皮一枚、種まですべて食べ尽くしてしまう私を あなたはいつも 丁寧に食した皿の上から 面白そうに眺めてい…

देवता

あなたの頭に王冠を わたしの王様 賢くやさしい、わたしの王様 最初の日を憶えている あなたの頭に捧げた その日をよく憶えている 指先から伝う感触、熱 伏せられたあなたの瞳、その睫毛の長さ、 震え あなたの王冠が血に染まった日 わたしはその血が誰のも…

blue

重なりあう 声と聲 捲し立てた口先 くちびるを噛んで そこで溢れた血を塗りたくって かえす、白紙 さみしいからと嘆いた眸(まなこ)は 焦点合わずして不透明に 裂けて消えて 果てて失せたおもかげよ 流線を描いて落ちた星 その閃光だけがいまも未だ わたしの…

mement : carpe diem

あなたの顔が見えないの 貴方の顔が思い出せないの あぁどうしよう 想い出すことすらしたくはなかったのに いつのまにか抜け落ちていた 人一倍忘れ去られることが嫌だったはずなのに 気づかれないようにそっと あなたは居なくなったのね 貴方の顔が見えない…

11月短歌(随時更新)

秘したまま変わらず幾世巡る声 木星よ、いつもそこに居てね ✴︎ 透明になって綺麗に溶けていくすべての線が曖昧な星 秘したまま変わらず幾世巡る音 木星よ、いつもそこに居てね ✴︎ 秘した音(/声)変わらず巡る幾世とて木星よ、いつもそこに居てね 秘した声(/聲…